山梨の人里離れた雑木林の中にある、ドイツ風の屋根と梁をもつ家に1999年より住んでいる両親のための小さな表札。
材料は以前同僚のヤコブからもらった樫材。加工した断面を雨から守るためと見た目の理由で、上部は銅板で覆い小さな真鍮の釘で止めてあります。文字部分を彫刻してチョークをベースにした白い塗料を入れたあと、木部全体を工房の同僚に分けてもらった ”Le Tonkinois“ というメーカーの、その耐候性の高さからボートの塗装によく使われるという透明のラッカーで塗装しました。
形は、私が住んでいるここミュンヘンで良く目にするバロック調の建物のファサードがしばしばこのような形の銅板で葺かれた屋根を持っていること、そして”宮”の漢字のウ冠の形を変形させたものを合わせて、中央がピンととんがって、左右対象に下に流れていく形にしました。銅板は一枚板で中央でぴったりと折って尖らせているのですが、初めて手にする材料ということもあり、加工は少し試行錯誤を要しました。
日本はこれから雨の多い梅雨に入り、これから銅板の風合いがどう変化するのか、どのくらいで緑青が出てくるのか、今後の銅板を使った仕事のためにも時々両親に写真をとって送ってもらい観察していくつもりです。
こう書いていると、山梨の両親の家の雨のふる新緑の雑木林、クヌギやクリのこずえから絶え間なく落ちる雨の情景が浮かんできます。
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