昔、ディスプレイや店内装飾を作る仕事をしていたことがあった。
何かと汚れる制作作業の為に、自前で白いツナギを買って着ていた。
毎日使うカラースプレーとウレタン塗料で、最初は白かったツナギはあっという間に汚れていった。
赤、青、黄、緑、茶、黒、、ネオンカラーや金銀、特別に調色した塗料。
数え切れない種類の色が、白かったツナギの生地を毎日汚し、重なり合い、昔の汚れを覆っていった。
ふとある時、ツナギが灰色になっていることに気づいた。
それは単なる白に黒を混ぜた灰色ではなく、深い暖かみのある灰色だった。
それ以来、私は灰色に惹かれるようになった。
昔誰かがなりたいと歌った「美しいドブネズミ」もきっと、こんな灰色をしている。
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